■恐怖のナポリタン■
ある日、私は森に迷ってしまった。
夜になりお腹も減ってきた。そんな中、一軒のお店を見つけた。
「ここはとあるレストラン」
変な名前の店だ。
私は人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。
……なんか変だ。
しょっぱい。変にしょっぱい。頭が痛い。
私は苦情を言った。
店長:「すいません作り直します」
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。
今度は平気みたいだ。
私は店をでる。
しばらくして、私は気づいてしまった……
ここはとあるレストラン…………
人気メニューは…………ナポリタン…………
「恐怖のナポリタン」は、ネットの掲示板にときおり現れる謎の小話だ。ご覧のとおり意味はまったく不明で、どことなく不気味な雰囲気がただよっている。
あまりの謎ぶりにネットでは議論が沸騰。「人肉を食べさせられた」、「『注文の多い料理店』のオマージュ」など様々な説が現れ、しまいには「意味がわかった者は死ぬ」とまで言われるようになった。
真偽はわからないが、何か深くて恐ろしい意味が隠されているに違いない。
なんとも不気味なストーリーだが、その正体は、アメリカンジョークを誤解しただけだ。
誤解の1つめは、文中の「ナポリタン」の意味。日本ではスパゲッティの定番だが、海外でナポリタンといえば「ナポリタンアイスクリーム」という三色の菓子を意味する。
また、このナポリタンアイスクリームは、三色の色合いが下品なことから「不潔・不味い」という意味のスラングとしても使われている。
もう1つの誤解は、「ここはとあるレストラン、人気メニューはナポリタン」という文章の解釈だ。これは原文では次のようになっている。
”This is a restaurant famous for a napolitan.”
直訳すれば「ここはひどい料理を出すレストランです」になるが、作中の男は「ナポリタンアイスで有名な、あるレストランです」という意味だと勘違いしてしまったわけだ。
つまり、「恐怖のナポリタン」とは、本来はしょうもないアメリカンジョークだったものを、日本人が勝手に怪談のように解釈しただけだったのだ。