1985年、イギリスのヨークシャー地方で奇妙な火事が続発した。焼け落ちた火災現場に、必ず涙を流す少年の絵が残されていたのだ。
不思議なことに、いずれの絵も焦げ目すらなく、完全に無傷の状態だった。
少年の絵は高価な一点ものではなく、当時のイギリスで何千部も複製された平凡な商品。それが、なぜこのような災厄を招くのか、真相は謎のままだ。
「泣く少年の絵」の一部。この他にも数種類のバリエーションがある
全焼した家のなかでも、絵は無傷で残されていた
絵に防火処理がされていました
呪いの解明に乗り出したスティーブ・パントさん。本職はコメディアンだとか
当時のイギリスでは、国内の「泣く少年の絵」をすべて集めて燃やすイベントまで開かれた
英BBCテレビが行った、「泣く少年の絵」の燃焼実験。数時間の火攻めにも関わらず、絵は燃え切らずに残った
長らく本物の呪いとして扱われてきた怪現象だったが、2011年に英BBCテレビのスティーブ・パントが調査に乗り出した。
パントによれば、まず80年代の複製画には防災用のコーティングが施されるケースが多く、もともと火災には強かった。
次に、「泣く少年の絵」は当時の複製画のなかでは人気が高く、国内での流通量が最も多かった。
つまり、火災が起きた家に、たまたま流通量の多い「泣く少年の絵」が焼け残っていただけだったのだ。